2-1.写真は見た目どおりには写らない
写真は真実を写しません。…いや、撮り手によるかもしれません。むしろ真実が見えていないのは人間の眼かもしれません。人間の心はもっと真実が見えません。そもそも、真実って何なのでしょう…
…という話ではなく(笑)真実が写っていようといまいと、現実が写っていようといまいと別に構わないのですが、“物理的な意味でも”写真は見た目どおりには記録されないものです。だからこそ撮り手の感性を写し込む余地があるのだと思います。
前述のように、写真には時間の流れがないというのもそのひとつですし、人間は二つ目、カメラは一つ目であることも立体感や距離感の違いなどを生み出します。カメラはズームできますが、肉眼ではズームできません。
人間の眼は順応します。トンネルから出ると最初まぶしくてもすぐに慣れます。部屋を出て夜空を眺めると最初は何も見えなくてもだんだん星が見えるようになってきます。カメラは順応しません。使われるのを待っています。
人の心のなかでは、目の前にあるモノを見ているときと、時間が経ってからそのモノを思い出したときでは色が変わっています。桜のイメージの色は、本当の桜の花びらよりも鮮やかです。カメラは一旦記録したら色は変わりません。
写真は、撮ったあと時間が経ってから見返します。何を思い出したくて見返すのでしょう。そのとき着ていた服の色でしょうか。そのとき感じていたことでしょうか。事実か、印象か。求めるものによって必要な色は違ってくるかもしれません。
何を真実として写すのか、すべては撮り手次第です。1枚の写真が生まれれば、そこに写真があることは真実です。その時、その場所で、撮り手がそう感じていた…という真実を揺らぎなく残し、伝えられるものなのでしょうか…